団体プロフィール
【一般社団法人老人病研究会について】
一般社団法人老人病研究会は元東京大学病理学教授、東京医科大学学長を歴任された文化勲章受賞者(故)緒方知三郎先生(緒方洪庵の孫)により1954年に設立されました。当初は老人病研究所を付置研究所としていましたが、老人病研究所は1968年に本法人から日本医科大学に移管されました。
本法人の事業目的は、“老人性病変の発生に関する理論と実際の研究によりその予防を図り健康の増進ならびに確保の普及により広く社会の福祉に関与する”ことです。
本法人の活動としては、市民公開講座の開催、武蔵小杉地域の健康増進活動、日本医科大学老人病研究所社会連携事業「街ぐるみ支援ネットワーク」への支援事業などを行っています。認知症国際フォーラムを2年連続で開催し、特に昨年は東洋医学における漢方や鍼灸が認知症に著しい効果を発揮する事実を本邦ではじめて報告致しました。フォーラムがNHK教育テレビで放映されたことで大きな反響を呼ぶに至りました。
その結果を受け本法人は、今年度の事業として認知症に関する統合医療(西洋医学/鍼灸・リハビリ・ケア)のマスタースクールを設立開講し、認知症治療に特化した鍼灸師・医師の育成と実践事業を展開することになりました。高齢社会で避けて通れない認知症の対処法は世界中で広く望まれております。
【鍼灸による認知症の治療効果】
鍼灸による認知症の治療は、「人」が寄り添うことから始まります。初めは患者様が抵抗することも多くありますが、鍼灸師との信頼関係を作り、施術を受けることで「頭がすっきりした」「歩けるようになった」という喜びを体験します。また、鍼灸による刺激が内臓や脳を活性化し、生きる気力を生み出します。このような一連の人間性の高い治療を通じ、認知症に多くみられる暴力・興奮・徘徊・妄想といった周辺症状を抑え、人間らしい穏やかな性格を取り戻ることを目的とした治療方法です。
【認知症治療(三焦鍼法)】
三焦鍼法(さんしょうしんぽう)とは、平成26年度に文部科学省の委託事業として認定された、「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進事業」で取り入れている認知症の鍼の治療法です。
中国の天津中医薬大学の韓景献教授チームが、認知症患者に対して開発した治療法です。「三焦気化失調ー老化相関論」にもとずき、三焦気化の調節という角度から老化を遅らせ、さらに老年病の予防と治療を目的とする「益気調血・扶本培元鍼法」を開発した。
治療の基礎となる「益気調血・扶本培元鍼法」には、「三焦の気を動かし、三焦の血を整え、後天の本を助け、先天の元を培う」という効果があり、老年性認知症患者の知能状態と生活能力を改善することができる。臨床研究および基礎実験研究により、本治療法は脳老化と骨老化に対して確かな効果が認められることが実証された。また、動物の生存期と繁殖期をある程度延長させることが実証された。これらの研究成果については、国内外の専門家の普遍的な認可を受けている。
また、本治療法は血管性認知症(VD)患者の記憶力、見当識力、計算力を著しく改善することができ、とりわけ見当識力の改善に対しては特に顕著な効果が認められた。
435名の血管性認知症と老年期認知症患者に対する臨床試験研究を通じて、本治療の血管性認知症(VD)に対する短期効果と長期効果が、ともにヒデルギンによる効果よりも著しく優れていることが実証されている。
知能状態と生活能力が著しく向上を示し、また良好な状態を維持できることも実証されている。
三焦鍼法は弁病論治によって行われるため、基本的に患者さん個々の病態の差異にかかわらず、以下のとおりの配穴と手技をする。
「益気調血・扶本培元鍼法」
1.膻中(上焦) 横刺 15mm(5分) 捻転補・呼吸補
2.中脘(中焦) 直刺 60mm(2寸) 捻転補・呼吸補
3.気海(下焦) 直刺 45mm(1寸5分) 捻転補
4.両 外関(三焦) 直刺 15mm(5分) 平補平瀉
5.両 足三里(気) 直刺 15-30mm(5分~1寸) 捻転補
6.両 血海(血) 直刺 15-30mm(5分~1寸) 平補平瀉
認知症は主なものとして、「アルツハイマー型認知症」、「脳血管型認知症」、「レビー小体型認知症」、「前頭側頭型認知症」に分類されます。このうち50%が「アルツハイマー型認知症」、20%が「脳血管型認知症」、20%が「レビー小体型認知症」によるものとされています。
この治療法はすべての認知症一定のに効果があり、特に日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)の改善には高い効果があります。予防にも効果が高いので、物忘れが多い方にも受けていただけると、認知症のリスクが低くなります。
著書・掲載メディア